~RightNow開発物語~


①香川県高松養護学校との出会い(2012年8月)

 開発者である岡田は、香川県産業成長戦略における産業人材の育成事業である源内塾に入塾していました。その学びの中で、町工場が製品開発を行いメーカーとなることは出来ないだろうかと悩んでいたところ、かがわ健康関連製品開発フォーラムで知り合った香川県立高松養護学校の先生から「車いすでiPadが使えるテーブルを作ってくれませんか?」という依頼を受けました。当時は福祉機器について無知であったため、すぐにできるだろうと安易に考えていました。「いいですよ。」と簡単に引き受けてしまった私の短絡的な行動からこの物語が始まりました。


②試作1号機完成(2012年12月)

 早速開発に取り掛かったものの、なぜテーブルが新たに必要なのか?従来の車椅子用テーブルではだめなのか?という疑問が沸き上がったのです。養護学校の先生と生徒さんに質問し話を聞いてみたところ、その理由が分かってきました。

車いす走行中にテーブルがあると視界がさえぎられてしまう。

車いすの走行時は、足元が見えないと不安であるという声があがったのです。これを克服するテーブルの試作1号機が2012年12月に完成しました。走行中テーブルが前方に上がり、使わないときには側方に移動する作りになっているiPad用の可動式テーブルです。

試作品を養護学校の生徒さん達に使用してもらった結果、多くの問題が発覚しました。
・重量が3kgもあり重すぎる。
・テーブルが車いすの外にはみ出ているため使いづらい。
・デザインがダサく悪目立ちする。


③とにかく調査して考え直しだ!(2013年4月)

 試作1号機で問題点が浮き彫りになり、何とかしなければと思いました。しかし、本当にこの試作機を改良したテーブルが必要なのか?という自問自答を繰り返しながら悩み続ける日々が続きました。そこで、養護学校の生徒さんだけでなく、様々な年代の車いす利用者さんの話を聞こうと考え、近くの社会福祉法人 香川ボランティア協会 生活支援センター「サンサン」の職員さんに助けを求めました。ここで、話を聞かせていただくうちに、私の知らなかった車いす利用者さんならではの不便が分かりました。

・大きいテーブルは頻繁に使わない。
・普段使っている鞄が使いづらい。(車椅子利用者に適した鞄が少ない。)
・片手の場合、日常作業がやりづらい。(特に財布の小銭やカードの出し入れ。)
・車椅子の幅をはみ出るものは非常に使いにくい。

このような課題に気づかされたことで、私の開発の方向性に一筋の光が差しました。

 

車いす利用者さんが求める車いす用テーブルの条件
・思い立ったときすぐに作業ができる。
・軽い、コンパクト、車椅子からはみ出ない。
・カッコいい。
・片手で操作可能。
・視界を遮らない。

これらを実現することは大変困難であったため、頭を悩ませながら図面を描く日々が続きました。


④2号機完成(2013年9月)

車いす利用者さん達とのやり取りを交わすうちに、テーブルを膝下から使用位置まで上下できるような構造にしてはどうかというイメージがわきました。これなら視界を遮らずコンパクトにできる。そして、テーブルに箱型の鞄を付けてはどうだろうか。そうすれば、すぐに作業ができるテーブルになると考え、ようやく2013年9月に2号機が完成しました。

しかし、モニターしてもらった結果、不満の声の連発でした。
・重量2kgでもまだ重い。
・テーブルと鞄が使いづらい。
・ダサい・悪い意味で目立つ。
まだまだ改良点だらけです。


⑤3号機完成(2014年1月)

2号機のモニターでも、鞄とテーブルが使いづらいとの事でした。行き詰まり困り果てていたところ、生活支援センター「サンサン」の職員さんの「鞄とテーブルを一緒にすればどうですか」と養護学校の子供たちの「これくらいの重さなら自分の力で持ち上げられるよ。」との言葉によって、打開策が見つかり開発が進みました。片手で取手を移動するだけでカバンの蓋を開閉でき、テーブル代わりにもなる鞄の開発に成功し、いらない機能を可能な限り省くことでテーブル自体の軽量化に成功し、ようやく要望を満たす試作機が2014年1月に完成しました。この3号機はデザイン性も向上し、ようやくモニターの皆様から使ってみたいという声を頂けるようになりました。モニターで1ヶ月ほど利用した方の中には、大変喜んで使っている、テーブルの本質である「すぐにできる」が日常生活を大きく変えた、というような感想を持った方もいらっしゃいました。このような利用者様の言葉を聞けたことは、製品開発に身を置く私にとって最高の喜びでした。


⑥ここからが勝負!(2014年4月)

しかし、ここで完成というわけにはいきません。
(1)強度  (2)デザイン性  (3)生産性 この3点のさらなる向上を目指しました。

(1)強度
強度については、荷重2kgの重りをつけての耐久試験を行いました。4万回は耐えて欲しいところ、2千回程度で軸の各部が折れてしまいました。普通のステンレスSUS304という材料では歯が立ちません。

(2)デザイン性
板を2枚挟んだだけのアームでは、中の部品が丸見えになってしまい不格好です。また、カバンも製品というには見た目が悪いままでした。

(3)生産性
生産性については、数百個単位という小ロットでの部品作成の発注を受けてくれ、コストも合うような所があるのだろうかという問題がありました。


⑦4号機完成(2014年9月)

数々の問題点に苦悩しながら、テーブルを絶対に完成させようという強い気持ちに支えられ、図面引き直し作業、適した部品探し、自ら部品を作成してのテスト等々、3ヶ月程続ける内に解決方法がようやく見えてきました。強度に関しては、航空機で扱う高強度の部品を採用、デザイン関しては、アルミダイキャストやロストワックスという金型を使用し、デザイン性を保ちつつ低コストで部品を作れる一体成型という生産方法があることを知り採用しました。また、カバンの生産で有名な兵庫県にある豊岡のカバン屋さんに生産を依頼することができ、カバンのデザイン性と品質が大幅に向上しました。それぞれの業者さんに試作品を依頼し、それらの部品がうまく組み合わさり、ようやく4号機が完成しました。そして、東京ビックサイトにて開催される福祉機器展にテーブルを出展することが決まりました。


⑧名前も決定、ついに東京国際福祉機器展へ(2014年10月)

福祉機器展に出展する前に、テーブルに名前を付ける必要がありました。ぴったりの名前を付けるため、テーブルを使った車いす利用者さんたちの声を思い起こしてみました。「今まで時間がかかり過ぎてできなかった事が、このテーブルを使うとすぐにできるようになった。心に余裕ができて人生が楽しくなった。」というような声が多かったことを思い出しました。この「すぐにできる。」という言葉がこのテーブルの特徴であり、当初から私が提供したいと思い描いていた内容ともマッチしていると考え「RightNow」という商品名に決定しました。

そしてついに福祉機器展へ出展、多くの人々に向けてのRightNow初披露であるため非常に緊張しました。しかし、不安とは逆に800枚近く用意したパンフレットは皆様に全て持ち帰って頂く事ができ、非常に多くの方々がRightNowをご覧になっていかれました。大変ありがたいことです。

 

十数名の方については、自分の車いすにRightNowを実際に装着して、すぐにできるというコンセプトを体験して頂きました。

 

今回RightNowをブースに出展させて頂いた、かがわ健康関連製品開発フォーラムの皆様には大変感謝しております。